- 菊池捷男
8.職業奉仕と七歩の詩
ロータリーでは、「職業奉仕」が極めて重要です。その重要さゆえに、早くから「道徳律」が定められ、「四つのテスト」を毎例会で唱和しているのです。
しかし、ロータリー章典に書かれた「職業奉仕」は、「あらゆる職業に携わる中で、奉仕の理念の実践をロータリーが培い、支援する方法である。」(ロータリー章典8.030.1)ですが、私は、職業奉仕を、”自分の職業を行うあらゆる段階において最高の倫理の筋を通すこと”と理解しています。
とはいうものの、これらは、職業奉仕の概念論であって、職業奉仕の具体的な内容(いわば実践論ないし方法論)を語るものではありません。
ロータリアンの職業は、ますます多様になり、高度になってきております。
それゆえ、すべてのロータリアンは、今、「職業奉仕」という言葉を使わないで、「職業奉仕」を語る時期が来ているのではないかと愚行します。つまり概念論を脱して実践論を語るのです。
より分かりやすくいいますと、ロータリアンは、自分の職業を、自らが、言わば七歩の詩で、語る時期になっているのではないかと思うのです。
七歩の詩とは、すなわち、三国志で有名な曹操の長男である曹丕が、魏の皇帝(文帝)になった後のある日のこと、弟の曹植に対し、七歩あゆむ間に兄弟という言葉を用いないで兄弟のことを作詩せよ、それができれば許すが、できなければ死罪に処すと命じました。
これに対し、曹植が作った詩が、次のものです。
煮豆燃豆萁(豆を煮るに豆がらを燃やす) 豆在釜中泣(豆は釜中(ふちゅう)にあって泣く) 本是同根生(もとよりこれら同根より生ずるを) 相煎何太急(あい煎ること何ぞはなはだ急なる)
この詩を読めば、「兄弟」という言葉を見ずして兄弟のことが、そのうえに曹丕と曹植のことが、それぞれの置かれた立場が、そして曹植の心情までが、手に取るように分かります。