- 菊池捷男
1.ロータリーは、多様な、大廈の材の淵藪
大廈(たいか)の材は一(いっ)丘(きゅう)の木にあらず」という言葉があります。
意味は、宮殿のような大きな建物は、その辺りにある小さな山(丘)の木でできているわけではないというものですが、ここから転じて、大をなす組織は必ず、大廈の材すなわち多くの優れた人材によってつくられるのだという意味になります。
これを歴史に求めますと、項羽と劉邦の戦い(別名:楚漢の戦い)における劉邦軍、すなわち漢帝国を興した人材に見られます。ここには張良がいて、韓信がいて、陳平や蕭何その他、多様性に富む多くの人材が集まりました。彼らの能力や職掌(ロータリーでいう「職業分類」に相当)はそれぞれ違います。
大局観をもった戦略家の張良、軍事の天才であった韓信、謀略線に長けた陳平、それに軍需物資と兵の徴募と民政を専門にした蕭何等々、それぞれ持っている能力が異なっているのです。
劉邦軍は、まさに多様性を絵に描いたような人材の淵藪(魚が集まる淵・鳥獣が集まる藪と同じく、物資や人材、その結果としての文化が集まる場所)をなしていたのです。
私が、ガバナーへの道を歩かせていただくようになって、地区内外の多くのロータリアンたちと親しくなりましたが、ロータリーも、まさに大廈の材の淵藪、という感を強く持ったものです。
なお、次の補説で、ロータリーの人材の多様性と比肩できる、楚漢の戦いに見られる大廈の材から二人を選んで、二人がいかなる大廈の材であったかを紹介いたします。
なお、楚漢の戦いに勝利した劉邦については、その人物像が茫洋としてよく掴めません。
ただ、書「孫子」に書かれた次の言葉の「君」であったことは間違いなさそうです。
ですから、劉邦もまた大廈の材の一人なのでしょう。
「将の能にして、君の御せざる者は勝つ」(意味:有能で、君主からなんら誓約されない将軍は、勝利する)